レズ風俗呼称をめぐるLesbianの語源と定義の変遷「それ、レスボス島でも同じこと言えるの?」

2022年8月4日

レズ風俗(レズビアン風俗)の呼称についての歴史について

その存在自体が曖昧だった時代から女性同性愛者を含む不特定多数のなかから誕生し

2004年にレズビアン雑誌で初掲載され、その後、SEO対策としてウチが名乗りはじめ

永田カビ先生のエッセイコミックの反響で世の中にいっきに普及し

レズ風俗を名乗る悪質業者も増えたということを前回の記事『レズ風俗の呼称について~Wikipediaにまだ掲載されていないレズビアン風俗の真実~(2022年4月5日公開記事)』で資料を基に、述べさせていただきました。

レズ風俗レズっ娘グループ代表

御坊です

なお、前回記事公開後、日本語版Wikipedia『レズビアン風俗』では

レズ風俗の『呼称』について、私御坊の考え方だけでなく

レズ風俗やレズビアン風俗を名乗る悪質業者の『問題』についても加筆、修正いただきました。

ありがとう御座います。

実はまだまだ修正いただかないといけない点もあるのですが

今回の記事は、前回記事で紹介させていただきました

レズ風俗呼称についての補足として

Lesbianという言葉の語源や定義の変遷について

なるべく深くご紹介していく必要があるのではないかと考え

今回はLesbianの語源とレスボス島の名の由来

Lesbianということばが別の意味として使用されていたという事実を

今回も資料をもとにお伝えしていきます。

まずは、Lesbianには現在、3つの定義があると考えております。

Lesbianの3つの定義

日本語版Wikipedia『レズビアン』では、2022年4月19日現在『レズビアン(英: lesbian)とは、女性の同性愛のこと。』とだけ定義されておりますが

実際には、3つに分別することが出来ると考えております。

女性同性愛、女性同性愛者

日本語版Wikipedia『レズビアン』によると今のところ

女性同性愛の最も古い記録は、おおよそ紀元前625~570年頃、古代ギリシアのレスボス島に住んでいた女流詩人サッポーとされている。レスボス島がレズビアンの、サッポーの名が「サフィズム」という女性同性愛を示す言葉の語源ともなっている。現代の学説では、サッポーが育んだ教え子である少女との友愛関係は、古代ギリシアにおける同性愛と同様のものとの提唱がなされている。(Wikipedia『レズビアン』)

英単語の語源についてのオンライン語源辞典『オンライン・エティモロジー・ディクショナリー (英語: Online Etymology Dictionary)』でも同様に

ギリシャの島レスボスは、エロティックかつロマンチックな詩で男性だけでなく女性をもカバーした偉大な叙情詩人サッフォーの故郷であり、それゆえ「(他の女性に対するエロティックな関心を特徴としている)女性の同性愛関係についての~」といった意味で1890年から継続的に使われ始めている。(Online Etymology Dictionary 『Lesbian』)

レズビアン(Lesbian)は、”形容詞で使われる”lesbianから由来して

「女性同性愛」の意味で1925年から『名詞』として使われている。

なお、「女性同性愛」「女性同性愛者」という意味のLesbian(レズビアン)については、たくさんの文献や様々な書籍などで解説されており、また、現在、日本語版Wikipedia『レズビアン』については、主に「女性同性愛」「女性同性愛者」という意味のレズビアンを中心に解説されています。

この定義の変遷については、次の機会にご説明したいと思います。

女性同士の行為の意味

前回記事『Wikipediaの『レズビアン(日本語版)』と『Lesiban(英語版)』の差異』、『日本でも『行為』の意味として『レズ』『レズビアン』が使用されてきた』でもご紹介しましたが、様々な歴史的資料からみてみると

Lesbianという言葉の由来は『女性同士の性的な”行為”』を関連付ける”形容詞”から誕生したことがわかります。こちらについても後日解説します。

さて、今回、メインでご紹介させていただくLesbian(レズビアン)についてはじめに、そもそもの語源となったレスボス島についてご紹介します。

レスボス島の~という意味

レスボス島と牛窓
ギリシアのレスボス島は、エーゲ海の北東部に浮かぶ、トルコ沿岸に位置するの人口85,330人が住む島です。ちなみに大阪市中央”区”の人口が10万人ほど

島の広さは、ギリシャではクレタ島とエヴィア島に次ぐ3番目に大きな島で、面積は1,636平方キロメートル、大阪府の面積が1,899平方キロメートル、沖縄本島の面積が1,199平方キロメートルなのでかなり大きい島です。

レスボス島の首都ミティリニ市は、岡山県牛窓町と姉妹都市となっています。

ギリシャにある『レスボス島の~』という意味で使われた英語での形容詞(『Lesbian』)の起源は、1590年代から、この英語表記の『Lesbian』は、レスボス島から関連する言葉で、元はラテン語のLesbiusに由来する。もっと大元はギリシャ語のlesbios(「レスボスの」の意)(Online Etymology Dictionary 『Lesbian』)

と、あります。

まずは、Lesbian(レズビアン)という名称の語源となったLesbos(レスボス)という島の語源やレスボス島についても調べてみることにしました。

レスボス島の島の由来と英雄レスボスの伝説

ここではギリシャ神話のなかで登場する英雄レスボスについてご紹介します。

英雄レスボスの伝説

ギリシャ神話のなかでは、レスボス島の由来となったという英雄レスボスについて、英語版Wikipediaと観光ガイドサイト「Travel S helper」には、こう記されてました。

英雄レスボス伝説その1

伝説によると、太陽神がこの島を愛し、息子のマカレスをこの地に送ったといわれています。
マカレス王には5人の息子と4人の娘の9人の子がいましたが、彼は島を分割し持参金として娘たちに分け与えました。
港とその土地は最愛の娘ミティリーニに与えられたので、現在のレスボス島の首都はミティリーニにちなんで名づけられました。
ミティリーニはレスボスという男と結婚しました。
王が死ぬと、レスボスが王位につき、島は彼にちなんで名づけられました。(Travel S helper 「LEGENDS ABOUT THE ISLANDS OF LESBOS,GREECE」)

これに続いて、こうも記されておりました。

英雄レスボス伝説その2

また、島の守護神の名前にちなんでこの島が名づけられたという伝説もあります。
島の守護神の名はレスボスで、ギリシャの英雄ラピテースの息子でした。(Travel S helper 「LEGENDS ABOUT THE ISLANDS OF LESBOS,GREECE」)

英語版Wikipedia『Lesbos』

英語版Wikipedia『Lesbos』の歴史(History)としてこう記述してます。

古代ギリシャ神話によると、レスボスはこの島の守護神であった。

最初の王はロードス島のマカレウスとされ、その娘たちは現在の大きな町のいくつかにその名を残している。

古典神話では、マカレウスの妹のカナケーが、彼を王にするために殺されたとされている。

女性に由来する地名については、「それ以前の集落が地元の女神に由来しており、それが神に置き換えられた。」と主張する者(誰であるかは不明)がいるが、それを裏付ける証拠はほとんどない。

ホメロスはこの島を「マカロス・エドス」(マカールの地)と呼んでいる。

「この島をラズパと名付け、(ヒッタイトの)地元の神々が来られないときに、王の治療のため彼ら(レスボス島の住民)の神々(おそらく神像)を借りていた。」という青銅器時代後期のヒッタイトの記録から、ヒッタイトはレスボス島の人々を重要だと考えていたに違いない。

青銅器時代後期にギリシャ本土、主にテッサリアからの移民がこの島に入り、ギリシャ語のアイオリス方言をこの島に残していったと考えられている。その書き言葉は、とりわけサッフォーの詩に数多く残されている。(Wikipedia 『Lesbos』)

レスボス島の島名の由来

上記は、ギリシャ神話の伝説として語られているもので、本来のLesbianの語源について、先ほど紹介した語源辞典によると

元々は“木々に覆われた”という意味(Online Etymology Dictionary 『Lesbian』)

こう推測されております。

Lesbian(形容詞)の定義の変遷

Online Etymology Dictionary によると

レスボス島から由来したLesbianという言葉は、現在のことばの定義と

まったく違った意味で使われてきました。

『柔軟な道徳や判断』という意味

レスボス島で古くから使われていた鉛製の石工用罫線(※罫線とは、複数の項目を二次的に区切るのに用いる線状の組版材料)のLesbian ruleというものがあり、そのレズビアン・ルールは成形品の曲線に合わせて曲げることができることから、「柔軟な道徳や判断」という比喩的な使い方がされていた。(1600年頃、特に17世紀に一般的)

『ワイン』を指す意味

レスボス島のオレンジワイン

英語では1775年からレスボス島産のワインを指す言葉として使われていた。

画像はレスボス島のオレンジワイン

『肉体関係を伴う恋愛のという意味

レズビアンという言葉が明確に“女性の同性愛に関する〜”ということを指すようになったのは最近からだが、それ以前から、「肉体関係を伴う恋愛の」、「エロティックな」といった意味合いが暗にあった。

それはレスボス島の住民たちの評判や詩の調子からきている。

エロティックなといった意味

島のエロティックな評判は古くからあった―――――

ギリシャ語にはlesbiazeinという「レズビアンを真似る」という意味の動詞があり、これは女性の「性的主導権や恥知らず」(特にフェラチオ)を意味するが、必ずしも女性同性愛とは限らず、現代に生きる我々のようにそれらを区別することはなかったと思われる。

とされている。

その他、船名

英語版Wikipediaでは

1800年代後半から1941年までに、SS『Lesbian』というギリシャのレスボス島からつけた船名の貨物船がLesbianということばの曖昧さ回避として3隻確認できます。

この”SS”とは蒸気船を意味する接頭辞だそうです。

レスボス島に関するもうひとつの「Lesbian」呼称問題

2008年に、"Lesbian"という正統な呼び名を奪われたことによりレスボス島民の一部が、権利と尊厳を損なわれているとして、島民を中心とするグループが、ギリシャ国内のLGBT団体「ギリシャ・ゲイ・レズビアン連合」(Greek Gay and Lesbian Community、OLKE)を相手どり、団体名から Lesbian の語を削除することを求める訴訟をアテネの裁判所に起こしました。

「Lesbian」を女性同性愛者を意味する言葉として使用することを止めようと提唱

カナダ・モントリオール(Montreal)在住のギリシャ人男性Yiannis Achlopitasさんは、「Lesbianはもともと『レスボス島の住民』という意味。しかし、私の母や娘、姉妹は自分たちのことをLesbianと呼ぶことを恥ずかしく思っている」と裁判で述べた。さらに、「海外に住む女性は、身を隠した生活を強いられている。インターネットや新聞などあらゆるところで生まれ故郷への攻撃が行われている。米国やカナダ、オーストラリアでの中傷は想像を絶するものだ」と話した。

また、レスボス島外に移住したあるギリシャ人男性は、「私の名前はポール。Lesbianです」と書かれた横断幕を掲げて、レスボス島の住民を応援している。

ある雑誌編集者は、世界中のメディアで、「Lesbian」を女性同性愛者を意味する言葉として使用することを止めようと提唱している。

レズビアンの観光名所となっているが、島民は歓迎していない。

ギリシャでは島の中心都市の名前からミティリニ(Mytilene)とも呼ばれるレスボス島は、女性への愛の叙情詩を歌ったといわれる、紀元前6世紀の女流詩人サッフォー(Sappho)の故郷として知られている。同島のエレソス(Eressos)は、レズビアンの観光名所となっているが、島民は歓迎していない

「ミティリニ島」と呼び替えている?

島の名についても「レスビアン」につながる「レスボス島」(レスヴォス島)の名は避けられ、中心都市の名を借りて「ミティリニ島」と呼び替えることが地元では一般的になっているとされ、裁判所は島民たちがこの名称によって侮辱されたと感じる理由はないとして訴えを棄却されました。

ことばは”いま”も使われている

自分が確認したところレスボスというレスボス島に関することばは現在も使われておりました。

レスボス島の住民の名称は、性別や性的指向を問わず、やはり、Lesbianとされており、差別的な扱いを避けるために仕方なく、ミティリニ(島)という呼称を使用せざるを得ないんじゃないかと推察します。

「それ、レスボス島でも同じこと言えるの?」

これらの事実を知った時

自分が生まれ育った地域の名称を変換して考えてみると

なんともいいがたい悲しい気持ちになってしまいました。

レスボス島について棚にあげられていないか

そして、レズ風俗呼称問題のなかで

「自分たち”だけ”のことば(?)」「盗まれた」として声をあげている方たちは

Lesbianという言葉が

もともと”レスボス島の人たちにまつわる言葉”だったことを無かったことにしているのではないかと感じました。

実際にレズ風俗やレズビアン風俗という呼称について

メディアやSNS(Twitter)上で言及されていた方数名のツイート履歴を訪ねると

誰一人としてレスボス島の呼称問題について触れている方はいませんでした。

Dialogueが必要なのかもしれない

2022年4月17日横浜ネイキッドロフトにて、『Dialogueレズ風俗をめぐることばときもち』という無観客配信イベントを開催しました。2022年5月1日23時59分まで視聴可能です。


『Dialogue』ということばの語源は「logos(ことば)」と「dia(〜を通して)」からなるギリシャ語の「dialogos(ダイアロゴス)」に由来しており、「人々の間で交わすことばを通じそこから、新たな理解が生まれてくる」という意味も含んでいるといわれておりイベントタイトルを名付けました。

結果、みなさんといっしょに『レズ風俗』ということばを通して、皆さんのなかで新たな理解が生まれたと実感してます。

今後このイベントDialogueは、定期イベントとして開催していく予定です。

レズ風俗呼称について言及している方たちともDialogueできたら

きっと双方が協力しあえることだってあるんじゃないかなって思います。

最後に

ミティリニ広場と牛窓の浴衣女性2名(画像許可済)今後、レズっ娘グループでは

レズビアンという言葉について『行為』の意味

『女性同性愛(者)』としての意味

そして

レスボス島に関連する意味

これら3つを分けて使うべきと発信し続けます。

また

レスボス島やその住民の方たちに敬意を払って

そして、女性同性愛者の方たちに向けられ蔑称とされてきた『レズ』ということばを主体性をもって、あえて自分達で名乗ることでポジティブに『レズ』という呼称を使っていこうという女性同性愛者の方たちにことも尊重し

自分たちの誇りとプライド、そして責任をもって”今”はレズ風俗を名乗っていきます。

御坊でした

※オレンジワイン以外の画像は全て牛窓に旅行いったときに撮りました。