女性用風俗の男性セラピストさん側の労働問題のお話とか
性と生のことを書く文筆家『牧村朝子』さんと
性と死をみつめるノンフィクション作家『菅野久美子』さんがご出演された
『ルポ女性用風俗(ちくま新書)』出版記念イベント第三弾の配信を視聴させてもらったんですが
このイベント開始する30分ほど前にウェブメディア「FINDERS」にて
女性用風俗のセラピストさん側の労働問題について15000字の記事があがっており、イベントの休憩時間中とイベント後に拝読させていただきました。(ちなみにこの記事は5000字ぐらい)
今回は自分の立場から『ルポ女性用風俗』刊行記念イベント第三弾の感想と並行しながら
『女性用風俗はなぜ急増する? 低リスク・低コストなビジネス構造と、過剰サービスに疲弊する男性セックスワーカーたち』を読んで感じたことを書こうと思います。
レズ風俗レズっ娘グループ代表
御坊です
「FINDERS」に掲載された記事の冒頭に
「セックスワーク・イズ・ワーク」というスローガンもあるように、性産業で働く労働者の権利は、他の職業同様に守られるべきだ。だが、いまメディアで「女性用風俗」を語る言葉たちがそこにスポットを当てることは稀で、むしろ労働問題から目をそらしているかのようにみえてしまう。(FINDERS)
と、あります。
一応、今回の記事で、はじめにお伝えしておきたいのは
労働ということばの定義について、通常、男性向け性風俗、女風、レズ風俗など、ほぼすべての性風俗店におけるキャストやセラピストさんは個人事業主です。
つまり雇用関係に基づく労働ではないというのが前提なんですが、この記事にならい、あえてセラピストさんの”労働”(とする)問題について触れていきたいと思います。
キラキラしている部分しか出していないのではないか?
「働く側」については女性に対する献身的な姿を賛美するばかり。近年の主に女性を中心にしたセックスワーカーの人権や労働問題の注目の高まりに反して、男性セックスワーカーのそれには無頓着と呼べる2冊のノンフィクションを読んで、いち利用者として、そして文筆家として強く違和感を覚えたのだ。これはフェアではない。(FINDERS)
こちらについては御坊自身が『ルポ女性用風俗』を読んで
女性用風俗については、キラキラしている部分しか出していないのではないか?
という疑問があり
先日、自分が聞き手として登壇した『ルポ女性用風俗刊行記念イベント第二弾』での
イベント前の楽屋だったか、オンラインでの事前打ち合わせのなかだったか記憶が曖昧なのですが
登録料問題や女風の悪質店の存在、本番問題、そして、菅野さんはなぜレズ風俗を扱わないの?ってことを含め
菅野さんご自身に直接お聞きし「決してわざと書かなかったのではない」ということがわかりました。
実際に男性セラピストさんの労働問題について、自分が聞き手として登壇したイベント内でも上記の疑問にしていたこともトークテーマとして触れました。
先に言いますが今回の第三弾イベントでも「FINDERS」の記事でご指摘されている点について、ほとんど紹介しておりましたので是非ご覧ください。
女性用風俗は安すぎる!?
「月1000万円で人は死ぬかもしれない、でも月100万円なら人は死なない」という項目のなかで
セラピストのクラスによって価格は異なるが最高で「120分:2万4000円」、最低では「120分:1万6000円」とある。全国展開している大手グループ「H」の利用料金は120分で2万円で、この辺りが平均的な価格帯と思われる。
東京の男性向けデリバリーヘルスの相場価格は60分1万6000円〜2万1000円とされている。比べてみると、女性用風俗はほぼ半額程度に留まっている。カイも触れていた「お泊り(8時間程度の宿泊)コース」が大抵の女性用風俗店舗には設けられており、値段は5万円が相場だ。(FINDERS)
もちろんユーザーさん側からしたら今の相場でも安くないと思われるかもしれませんが、自分の感覚では安すぎると思います。
記事内で取材対象となられたセラピさんも
ホストだったら今や“エース”(※)はシャンパンタワーで1000万円使うことも珍しくないでしょ。だけど女風なら一桁少なくてもかなりの上客になれると思う。言い方は良くないけど、1000万で命を落とすことはあるけど、100万で人は死なない。お客さんにとってはそっちのほうがいいんじゃない?(FINDERS)
確かにホストクラブに比べてしまうとそうなのかも知れませんが
100万円でも人によっては死ぬんじゃないか。と個人的には思いました。
ちなみに男性向けデリヘルの60分1万6000円〜2万1000円という相場について下記のサイトに地方別のデリヘル相場が書かれてました。
なお、御坊は刊行記念イベント第二弾にて
『店舗数の拡大と低価格化の危うさ』についてお話しさせていただきました。
ただし、今回のイベントのなかで菅野さんは「女風は料金が上がると潰れるみたいです」と紹介されており、実際に先日、女風バーで御坊に接客してくれた現役の男性セラピストさんも「高級店は年に何軒か作られるんですが、出来てもスグにつぶれるんです」と仰ってました。
料金設定については下げるのは簡単だけど、上げるのはかなり難しいです。
低価格化は業界全体で変っていかないといけない問題だと思います。いい方法あるんだけどな
男性セラピストになるには登録料(講習料)が必要?
「女性用風俗店は参入リスクの低いビジネス?」という項目のなかで
「講習費実質無料(半年以内に退店した場合は講習費8万円は有料になります。)」
と、いう女風の求人ページの一文と共に
「講習」とは入店後に、新人が接客の流れや性感マッサージの実技を学ぶ教育システムのことだ。登録費とも呼ばれることがある。費用の相場は5万〜8万円。
これは、他の性風俗店にはない、出張ホストをはじめ男性セラピストのいる女性用風俗だけのシステムだと思います。
マジで羨ましい
レズっ娘グループの場合、対面面接の日程を調整し、面接も晴れて無事合格となると
3冊のごっついマニュアルを読ませるだけではなく
検査費用を立て替え、陰性だったらベテランキャストにホテル代と講習費渡して講習してもらい
スタッフと撮影用の服装など打ち合わせしてから撮影
ブログの書き方やシフトの登録方法など登録前のサポートした上で
ようやく登録となりますが、スグ退店される場合や、時には登録前に辞退されてしまうことがあります。
ただ、女風業界が講習代と称し登録料を回収しているのは別の理由があるようで…
記事のなかであるセラピストさんは
「5年前は無料だったけど、女性としたいだけのやつが増えた」ということが理由で現在は数万円とっているとのことでした。
当ブログの『レズ風俗の呼称について~Wikipediaにまだ掲載されていないレズビアン風俗の真実~』という記事の
『男性を派遣する女性用風俗『女風』という呼称の誕生』のなかでも少しだけご紹介しましたが
松坂桃李さん主演の映画『娼年』が4年前の2018年4月6日に公開されました。
Googleトレンド(上の図)でも『女性用風俗』の検索ワードが『娼年』というワードが公開と共に徐々に認知されていっているのがわかります。
セラピスト応募者に女性としたいだけのやつが増えたのは背景は映画『娼年』じゃないかなと思ってます。
女性用風俗における『登録料詐欺』の歴史
さて、こうした登録料について、Wikipedia『出張ホストクラブ』の
『犯罪との関係』という項目でこう書かれています。
店側がホスト志願者から登録料だけを取るだけとって、後は全然客向けに宣伝をせず、客からの指名が登録ホストに届くような形式にしていない場合だと、「登録料詐欺」といわれても仕方がない。
記事内でも、高い講習料を払ったのに運営側のサポートが全然されなかったと嘆くセラピさんの声も紹介されておりました。
サイト『出張詐欺実例集』によると、いわゆる登録料詐欺は1955年から確認できます。
【夜の女を貴婦人に仕立てて青年だまし70万円 “交際斡旋所”摘発さる】
入会費1,300円、会員500名、1~7月で約65万円の稼ぎ 東京(『毎日新聞』1955年8月10日)【“男を援助する貴婦人”斡旋所 男の盲点を手玉にとった夫妻】(『サンデー毎日』1955.08.21)
男を援助する貴婦人を斡旋する交際斡旋所の入会費が1300円だったようで当時の価値が大卒初任給(公務員)8.700円(2022年現在184,574円)だったらしいので今の価値で25000円ぐらい?
1970年初頭には、新宿2丁目にホストクラブが誕生し、その後、新宿歌舞伎町を中心に店舗も拡大・増加したようです。
1980年代前半頃には、東京、大阪、名古屋などの大都市でホストクラブの入会金詐欺が流行り、1980年代後半になると出張ホストの登録料詐欺が増加したようです。
【「エスコートボーイ」募集で詐欺 横浜】 6月初めごろから「エスコートボーイ募集」「1日5万円以上確実」などと記したチラシを1000枚刷り、JR横浜駅前で配って男性を募集。横浜市の事務所で、チラシを見て求人募集に応じてきた男性から、「保証金」と称して現金10万円をいただく。このほか容疑者たちは6月から9月末までの間に、26人から約200万円を詐取、一度も女性を紹介したことはなかったという。(朝日新聞1988.11.23)
この事件の翌年、福岡で15億円を7000人から搾取した出張ホストの登録料詐欺事件が発生します。
【月収70万円「出張ホスト募集」7000人の大誤算 学生・公務員から外資系社員まで】『週刊文春』(1989.11.02)
【「ホスト募集」詐欺で15億円貢いだ7000人!】『週刊新潮』
【「女性専科ホスト募集」で入会金15億円を搾取! ヘソ下副業に釣られた学生、サラリーマン7000人の応募動機】『アサヒ芸能』(1989.11.02)
【ホストになりたいヤツ寄っといで~】『週刊大衆』(1989.11.06)
【ホスト家業“甘~い生活”の意外な実態】『FLASH』(1989.11.14)
1994年には約420人からの被害相談、被害総額数十億円のニュースを取り上げています。サイトによれば先述の福岡のグループの再犯と記載されておりました。
出張ホスト詐欺で7人逮捕女性の求めに応じて交際するだけで高収入が得られると誘い、多額の入会金をだまし取る“出張ホストクラブ詐欺”。警視庁はこの日、エスコートクラブ経営者ら7人を逮捕した。警視庁には約420人から被害相談が寄せられており、被害総額は数十億円、2000万円近くをだまし取られた男性も。金銭欲と性欲とにつけこむ、巧妙な犯罪だった。(読売新聞 1994年5月24日)
その後、新聞広告や雑誌広告による登録料詐欺や、テレクラの回線を利用した被害も増え、1990年後半にはインターネットが普及し出会い系サイトなどでの詐欺も増加したようです。
<詐欺>高級婦人とデートで登録料詐取、被害者1万人超
「高級婦人とデートするだけで数万円稼げます」と雑誌に虚偽の広告を出し、現金を振り込ませた詐欺の疑いで静岡県警が逮捕したグループの被害者が、全国で1万人以上にも上ることが分かった。男性がほとんどで女性も数人いたという。被害総額は3億円以上とみられるが、被害届を出したのは12日現在でわずか10人。県警は順次追送検する方針だ。
静岡県御殿場市の男性から現金をだまし取った詐欺の疑いで先月、逮捕されたのは同県富士市石坂、会社役員、佐藤●●被告(49)=地検沼津支部が組織犯罪処罰法違反罪で起訴=ら3人。
調べでは、佐藤被告らは04年秋ごろから「ビッグウェーブ」「パラダイス」「クリスタル」「サン・アカデミー」の4社の名前を使い、成人向け雑誌などに「全国のリッチな高級婦人とのデートがお仕事です」などの広告を載せ集客していた。
客の電話には女性アルバイト約20人が対応し、「数時間交際すれば3万円、お泊まりなら7万円稼げる」などと説明。「登録料」2万1800円と引き換えに女性10人分の写真を客に郵送。「交際したい女性3人に転送する」と履歴書を送らせ、「3人の紹介料」1万2000円と合わせ、多くの被害者に計3万3800円を振り込ませていた。押収された履歴書の中には、写真の女性への真剣な気持ちを原稿用紙何枚にもつづった手紙も見つかった。
しかし女性の写真は、雑誌の切り抜きや、アルバイト女性のもので、実際にデートしたケースはゼロ。客の電話にはアルバイト女性や佐藤被告の内縁の妻、村上●●被告(59)=同罪で起訴=らが、「高級婦人」を装い答えていた。
家宅捜索では氏名、住所、電話番号などを記した約1万人分の顧客名簿が見つかり、70歳以上の年齢の記入もあった。今も口座への振り込みが絶えないという。【稲生陽】(毎日新聞 2006年07月12日)
なお、この事件は2007年3月2日に下記の判決が出ていました。
主犯格の被告に懲役4年の判決 デート詐欺事件で地裁沼津支部 /静岡県(朝日新聞 2007.03.02)
デート詐欺:2被告、実刑と有罪の判決 /静岡(毎日新聞2007.03.02)
デート詐欺、主犯に懲役4年 女の役員も有罪判決 地裁沼津支部=静岡(読売新聞2007.03.02)
引用:出張ホスト詐欺実例集 http://noranekonote.bake-neko.net/hostconned.htm
『女性用風俗店は参入リスクの低いビジネス?』については
自分も登壇イベントでお話しましたが
付け加えるとすれば
ホームページは無料制作サイト、掲載してる電話番号が携帯電話の番号ってどうなん?
あと、登録料についてはあとから返還する供託金のような制度にすればいいんじゃないかなって思います。
個人的には、登録料という制度そのものについては、否定しませんがその費用について運営の使い方というか、男性セラピスト側へのサポートやバックアップに充当してあげてほしいと思います。
DM問題(時間外労働)について
記事の『「身体だけではなく心も癒やされたい」という欲望と感情労働』という項目のなかでセラピさんは
「SNSでの営業はとくに負担に感じています。月に一回しか予約してくれないのに、毎朝毎晩SNSでメッセージを送ってくるお客さんがいるんです。僕だって昼の仕事もあるから返事を半日放置していたら、“それでもプロなの?”と非難するような内容のメッセージが連続で届くこともよくありました。予約が決まったので返信しなくていいかなと思っていたら、やっぱり“プロ意識がない”と怒られました。本当に、なんなんですかね、“プロ意識”って……」
ウチはキャストらにTwitterなどSNSは一切させておりませんが
Twitterや質問箱を設けている他店のキャストさんもいらっしゃいますよね。
ちなみにレズっ娘グループでは、Twitterのリプのようなキャストブログのコメント欄を2011年に廃止、TwitterのDMのような秘密の伝言という店を通じての無料メッセージサービスを2016年に廃止しました。
これらについてはトラブルや事件が実際に起こり、都度ルール改正をしたのちに廃止したんですが
今考えるとこれってやりがい搾取だったんじゃないかなって反省してます。
今回のイベント第三弾でも、DM問題は無報酬労働とはっきり紹介されておりました。
あと、記事のなかでは、DMなどさせていなかった女風のお店が閉店したと紹介されてましたが、個人的には理由は別なんじゃないかなって思うんです。
なぜなら
DMしなくても指名はきます!
それはウチが証明してますので!
その他、レズっ娘グループがやってることをちょっとだけご紹介します
・ランキング制度ナシ
・永久指名”非”推奨
・延長制度ナシ※いまのところ
・フリー(指名ナシ)有料化
・キャストの時間外営業ナシ※キャスト任意のブログのみ
・キャスト座談会&再講習制度
・スタッフのサポートが鬼
・キャンセル料あり
・受付時間は12時から18時まで
・感染症対策ばっちり
・検査結果提示割引
・各店在籍人数の供給調整※ティアラ大阪そろそろ募集止めます
・キャストの顔出し一切ナシ
・セーフワードとセーフタップ
・レズ風俗ホットライン などなど
#女風ユーザーさんとつながりたい
ウチになくて女風にある
御坊がちょっとだけ羨ましいというか
レズ風俗ではありえないと思っていることがもうひとつあります。
それは
女風ユーザーさん同士のリアルなつながり
菅野さんはイベント内で女風ユーザーさん達について
第一段階 世界を知る
第二段階 沼る
第三段階 ピを共に支える
と、紹介されておりました。
#女風ユーザーさんとつながりたい
と、SNS上で知り合ったり、女風バーに行ったり
誰にも言えない女風利用について共感しあったり
なかには女風を通じてランチや旅行に行ったりする方たちもいるみたいです。
レズ風俗だと実際にお客様同士つながっても、トラブルや事件にしかならなかったという事例もいくつかありますし、そもそもウチでは出禁になります。
でも
ウチは違う形で支えられてると思うんです。
単なる私信が書けない他のお客様向けのキャストレビューやコースレビュー
お客様によるお客様へのアンケートと回答
これらは間接的かも知れませんが
お客様同士がお店やキャストを支えてくれているものです。
あと、お客様同士、安心と安全が守られる場所といえば
視聴者参加型の配信イベントDialogue!
Dialogue2~女性用風俗をめぐることばときもち~
『Dialogue』ということばは、一般的には、会話やセリフ、そして、対話という意味として使われております。
『Dialogue』ということばの語源は「logos(ことば)」と「dia(〜を通して)」からなるギリシャ語の「dialogos(ダイアロゴス)」に由来しております。『Dialogue』ということばには「人々の間で交わすことばを通じそこから、新たな理解が生まれてくる」という意味も含んでいるといわれております。
前回の配信イベント『Dialogue』では文筆家の牧村朝子さん、ライターの三浦ゆえさんと一緒にお電話で参加いただいたお客様方、シークレットゲスト、そして、コメントで参加いただいたみなさん、事前にご質問いただいていたお客様みなさんといっしょに『レズ風俗』ということば、それにまつわることばを通じて新たな理解が生まれ大変有意義なイベントとなりました。
今回は、ちくま新書から『ルポ女性用風俗』を刊行されたジャーナリストの菅野久美子さんをゲストに牧村朝子さん、三浦ゆえさん、御坊の登壇者4名とみなさんといっしょに『女性用風俗』ということば、それにまつわることばを通して、何か新たな理解が生まれたらいいなと考えております。
と、いうわけで
イベントご出演者募集中!
2022年6月12日(日)13時~15時に開催する配信イベント『Dialogue2~女性用風俗をめぐることばときもち~』にて、お電話でのご出演頂ける方向けの出演者応募フォームです。
女風、レズ風俗など女性用風俗を利用したことのある方、また利用したいけど不安に思っているまだご利用いただいたことのない方などのご参加を募っております。
たくさんのご視聴・ご参加お待ちしております。
セラピさんとも(電話でのご出演で)つながりたい!
御坊でした
あと
自分も似たようなことをよくやっちゃうんですが
個人的には今回のFINDERS記事について
菅野さん達とも直接話し合うことも可能だったと思うし
そうすればまた新たな理解が生まれたり
記事内容も違う文脈になったんじゃないかなって思いました。